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蛾類学会コラム1 フユシャクに魅せられて

               中島 秀雄

   

私が初めてフユシャクの♀を採ったのは1963(昭和38)年であった。最初の頃は採集のノウハウが確立されておらず、♂の採集すらままならなかった。最初のターニングポイントは1974年11月の奥日光湯元で、雪の降る中のウスバフユシャク類の乱舞に出会ったことである。そして、1987年4月4日に鬼怒川の土手でカバシタムクゲエダシャクの産卵中の♀を採集した。この時の卵は1000個以上あったが、飼育に失敗してしまった。

ここからカバシタムクゲとの長い闘いが始まり、新潟県、秋田県、栃木県と各地を歩き回ったが手懸りは得られず年月は経っていった。

カバシタムクゲエダシャクの再発見は思わぬ形で訪れた。2016年3月17日、矢野高広氏が私が♀を採った所を見たいということで案内をした。この時、矢野さんが♂を採集した。そして、 次の日私と阪本さんが産卵中の♀を採集し、飼育も成功し幼生期も解明できた。この採集記録が♂は53年ぶり、 ♀は29年ぶりの再発見となり、第二幕が始まったのである。

以前、むし社の矢崎さんとカバシタを採集できたら、本を出そうと話をしていた。そのような経緯があり、今回昆虫図説シリーズとして「日本の冬尺蛾」を出していただくことができた。この本では全ての種の雌雄の標本図版、生態図版とともに「冬の林に魅せられて」「フユシャクガ採集記録」「フユシャクガ交尾ペア採集記録」等も掲載することができた。
図版とともに「冬尺蛾」(1986、 築地書館)以降の採集活動を記しており、採集記録とともに多くの方に読んで頂ければと思っています。


Fig. 1 カバシタムクゲエダシャクを採集した筆者。Fig. 2 交尾するカバシタムクゲエダシャク、筆者撮影。

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Last update: 18 Oct, 2017